I think, therefore I am

思ったことを徒然に綴っていきます。多分、時事ネタ、技術ネタ、自己啓発ネタなど。

レスリング協会のパワハラ問題に、現代社会の老害を思った

 

レスリングもか。。。

 今週、日本レスリング協会が、栄和人強化本部長の、伊調馨選手に対するパワーハラスメントを認めて謝罪会見を行った。

www.youtube.com

(https://www.youtube.com/watch?v=C6GUwRpafV4)

 

 先週、相撲の協会の閉鎖性について思ったこと書いたのだが、(http://ykym100run.hatenablog.com/entry/2018/04/09/013532)

 この日本レスリング協会も相当に閉鎖的な体質のようだ。栄氏個人の辞任だけで幕引きしてしまおうという魂胆が見え見えで、協会そのものの体質や監督体制の改善については何も示していない。あの高飛車会見で恥さらした至学館大学長の谷岡副会長は出てこないし、会見での発言に対する謝罪もない。相撲同様、その常識とかけ離れた感覚に心底あきれる。

 

指導者が絶対的存在になってはいけない

 女子レスリングは圧倒的に日本が強い。五輪四連覇、三連覇など他の競技ではありえない。女子の競技人口が世界でも少ないという事情もあるようだが、日本の女子選手は小さい頃から積み重ねる練習量が世界と比較しても圧倒的に違うようだ。

 そしてこの栄氏、自腹で寮を建てて女子選手たちを住ませてプライベートまで徹底的に管理することを指導哲学としていたらしい。まさに相撲の徒弟制度のようだ。その情熱には敬服する。

 実際、この指導が実を結び、伊調馨吉田沙保里などの最強メダリストを多数輩出し、女子レスリングの黄金時代を築き上げたのは間違いない。しかしこの突出した実績が、栄氏のレスリング界での立ち位置を絶対的なものにし、今回発覚したパワハラにつながってしまった。

 吉田沙保里伊調馨が、その圧倒的な実績で絶対王者と崇められるのはいいが、指導者が絶対的存在になってはいけない。アスリートは自ら考えて環境を変えていかなければならない(当然、スポーツに限ったことではないと思う)。


 今回のパワハラ行為の発端になったのは伊調選手が栄氏のもとを離れて練習拠点を東京に移したことだという。選手が現状を打破するため自ら考えて拠点を変え、コーチを変え、練習方法を変えた。これが栄氏にとっては自身を否定された恰好となりパワハラ行為が始まったらしい。しかし伊調選手は陰湿なパワハラに屈せず、リオ五輪で史上初の四連覇を果たし、国民栄誉賞まで授与された。これが栄氏にとってはますます面目を潰された形となった。コーチが圧力かけられ、練習も出入り禁止となり東京五輪に向けた本格的な練習もできず、JOCの強化指定選手からも外され、現在の伊調選手は五輪出場も危うい状況らしい。もう日本国民にとっての甚大な損失だ。関係者は猛省してほしいし、こんな行為を長年放置してきた協会は役員総辞任して体制を改めるべきだ。

まさに老害

 それにしても日本人は、強い成功体験をしてしまうと、それに固執して閉鎖的になってしまう国民性みたいなものがあるのだろうか。老人を敬うという儒教的な文化が関係するのだろうか。財界でも高齢の経営者がなかなか権力を手放さないのが、日本の特徴らしい。

 今回のパワハラ騒動は、まさに現代社会における老害だ。閉鎖的なコミュニティでは、老人は、長年で培った知識や経験を後続世代に継承することで、その老人の存在価値がある。今回でいえば、栄氏の卓越した指導力がそれだ。

 しかし現代社会はグローバル化が進み、知識や経験は書籍やインターネットで広く共有され、所属するコミュニティ内で長老から伝承されるようなものではない。若者が自ら知識を吸収し、考えて知的価値を生産していく時代だ。

 レスリング界は、その閉鎖的な体質をなくし、栄氏の成功経験に縛られることなく、選手たちが自ら考えて成長していくことをサポートできるような組織になっていってほしい。2年後の伊調選手の五連覇を是非見たいものだ。